「プロダクトの医学的な正確性を確認してほしい」「SaMD(プログラム医療機器)の承認申請を検討しているが、どこから手をつければいいかわからない」「VCへのピッチで医療の専門性をどう説明すればいいか」——ヘルステック企業・スタートアップから寄せられるこうした相談は、いずれも共通点があります。医師の専門知識が必要なタイミングが、事業フェーズによって異なるという点です。
本記事では、ヘルステック企業が医師の外部顧問を活用すべき4つのフェーズと、それぞれの具体的な依頼内容、そして「どんな医師を選ぶべきか」の判断軸を整理します。
なぜヘルステックに「医師の外部顧問」が必要なのか
ヘルステックのプロダクトは、直接的・間接的に人の健康に関与します。そのため、医学的な妥当性の確保は、規制上の要件を満たすためだけでなく、ユーザーの信頼を獲得するためにも不可欠です。
しかし、フルタイムで医師を雇用するのはコスト面で現実的ではない企業がほとんどです。外部顧問として医師と契約する形が、スタートアップには特に適しています。
重要なのは、「医師資格があれば誰でもいい」わけではないことです。ヘルステックに必要なのは、医師免許に加えてデータサイエンス・規制(薬事)・事業開発への理解がある人材です。臨床医としての経験だけでは、SaMDの開発プロセスや投資家向けコミュニケーションに対応しきれないことが多くあります。
フェーズ1:構想・検証フェーズ(PMF前)
主な依頼内容
- プロダクトコンセプトの医学的妥当性レビュー:「このアルゴリズムは医学的に意味があるか」「エビデンスレベルは適切か」の評価
- 対象疾患・適応症の絞り込み:規制リスクと市場機会のバランスを考慮した適応設計
- 競合製品の医学的な差別化ポイントの整理:特許・エビデンス・臨床的意義の観点からの分析
- 投資家向けデックの医療領域監修:「医学的に誇大表現になっていないか」「規制リスクが過小評価されていないか」のチェック
このフェーズで顧問に求めること
構想段階で最も重要なのは、「この方向性で進めるべきか」というゴーサイン・ノーゴーの判断材料を提供することです。医学的に無効なアプローチに時間とコストを投じるリスクを早期に回避できます。月1〜2回のミーティングと随時チャット相談が中心になるフェーズです。
フェーズ2:プロダクト開発フェーズ
主な依頼内容
- 機能設計・アルゴリズムの医学的妥当性の継続レビュー:開発サイクルに合わせた定期的なフィードバック
- ユーザー向けコンテンツの医療監修:アプリ内の説明文・通知・教育コンテンツが医学的に正確かどうかの確認
- SaMD該当性の事前確認:開発しているプロダクトが薬機法上の「医療機器」に該当するかの判断支援
- 臨床現場のユーザビリティ確認:医師・看護師・患者が実際に使う場面での課題抽出(クリニカルワークフローの理解)
SaMD該当性の判断は専門家に相談を
日本では、AIを用いた診断支援ソフトウェアや治療用アプリが薬機法上の「医療機器」(SaMD:Software as a Medical Device)に該当する場合、製造販売承認または認証が必要です。SaMD該当性の判断基準は2021年のガイダンス改正以降、整備が進んでいますが、グレーゾーンも多く残っています。
「該当しない」と判断して開発を進めたが、後から規制当局から指摘を受けるケースがあります。開発フェーズ早期に医師×薬事知見を持つ顧問に相談することで、リスクを最小化できます。
フェーズ3:臨床開発・薬事承認フェーズ
主な依頼内容
- 試験プロトコルの策定支援:主要評価項目・副次評価項目の設定、サンプルサイズ計算の監修
- 倫理委員会(IRB)申請書類のレビュー:研究計画書・説明同意書・症例報告書(CRF)の医学的妥当性確認
- PMDA相談の準備支援:事前面談用資料の作成、想定される指摘事項の整理
- 臨床データの解析と論文化:臨床試験結果の統計解析、査読論文・学会発表資料の共同作成
このフェーズで顧問に求めること
臨床開発フェーズでは、医師としての専門知識に加えて統計解析のスキルが不可欠です。「医師免許はあるが統計は専門家に投げる」タイプの顧問では、試験設計の段階から問題が生じることがあります。自分でRやPythonを動かして解析できる医師であることが理想です。
フェーズ4:事業成長・パートナーシップフェーズ
主な依頼内容
- 医療機関・健保組合との提携交渉支援:医療現場・保健事業の担当者との対話での医師の立場からの橋渡し
- アカデミア連携・共同研究の調整:大学・研究機関との共同研究企画、プロトコル策定
- 海外展開時の医療規制調査:FDA・CE(ヨーロッパ)・PMDA規制の違いの整理と戦略助言
- 上場準備・投資家向けIR資料の医療領域監修:エビデンスの正確な記載、競合優位性の医学的裏付け
医師の外部顧問を選ぶ際の3つの判断軸
1. 医師×データサイエンスの両立
ヘルステックプロダクトの評価には、臨床的知識と定量的分析の両方が必要です。「医師だが数値は苦手」という顧問では、アルゴリズムの評価や臨床試験の設計に限界があります。自分でデータ分析ができ、論文を読んで批判的に評価できる医師を選ぶことが重要です。
2. SaMD・薬事への理解
臨床医として優秀でも、薬機法・SaMD該当性・PMDAのプロセスを知らない医師は少なくありません。治療用アプリや診断支援AIの開発では、薬事規制への理解が必須です。自身のプロダクト(または関与したプロダクト)が薬機法上の医療機器承認を取得した経験があるかどうかは、重要な判断材料です。
3. 事業フェーズへの柔軟な対応
フェーズによって必要な関与度は変わります。月1回の相談で足りる構想段階から、週1〜2回の深い関与が必要な承認申請フェーズまで、スケールアップ・ダウンできる顧問であることが望ましいです。固定された関与モデルしか提供できない顧問は、スタートアップの動きのある事業には合わないことがあります。
まとめ
ヘルステック企業における医師の外部顧問の役割は、「医療監修」という言葉一つに収まらないほど多岐にわたります。プロダクトの医学的妥当性確保からSaMD薬事戦略、臨床開発の設計・実施、投資家・パートナーへの説明まで、事業の成長フェーズに応じて活用できる専門性の幅が重要です。
「とりあえず医師の名前を借りる」ための顧問ではなく、プロダクトと事業の品質に実質的に貢献できる医師顧問との関係を、早いフェーズから構築することをお勧めします。
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キバロク株式会社の代表・市川太祐は、不眠症治療用アプリの臨床開発・医療機器承認取得(サスメド株式会社取締役として)、ブロックチェーンを活用した臨床開発システムの研究実績を持ちます。医師・医学博士(東京大学)×データサイエンティストとして、プロダクト設計から薬事戦略、臨床データ解析まで一貫して支援できます。まずは30分の無料相談から。
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