あなたの食事が腸内細菌を「設計」する

1万人規模の研究が示す、食べ物と微生物の驚くべき対応関係

調査レポート
あなたの食事が腸内細菌を「設計」する——1万人規模の研究が示す、食べ物と微生物の驚くべき対応関係

私たちの腸には数百種類もの細菌が棲んでいますが、その構成を最も強く左右する要因のひとつが「日々の食事」であることが、過去最大規模の研究で明らかになりました。この成果は、個人の食事記録と腸内細菌のデータを組み合わせることで、一人ひとりに最適な食事プランを提案する「パーソナライズド栄養学」への道を拓くものです。

研究の概要

イスラエル・ワイツマン科学研究所のEran Segal教授らのチームは、「Human Phenotype Project」に参加した10,068人を対象に、スマートフォンアプリで記録された食事内容と、糞便サンプルから得られた腸内細菌のメタゲノムデータを照合しました。解析の結果、食事内容から腸内細菌の多様性を有意に予測できることが判明し、検査対象となった724種の細菌のうち実に92.4%(669種)、320の代謝経路のうち97.8%(313経路)で、食事との統計的に有意な関連が認められました。

食品ごとに「相棒」の細菌がいる

特に興味深いのは、特定の食品と特定の細菌種との間に明確な対応関係が見つかった点です。コーヒーの摂取量は Lawsonibacter asaccharolyticus という細菌と強く相関し(r = 0.43)、ヨーグルトは Streptococcus thermophilus(r = 0.42)、牛乳は Bifidobacterium 属の複数種(r = 0.31〜0.36)とそれぞれ関連していました。

さらに、個々の食品だけでなく「食事パターン」も重要であることがわかりました。特に加工食品の摂取割合が高いほど腸内細菌の多様性が低下する傾向が示されています。

4年間の追跡で持続性を確認

研究チームは同じ参加者を4年間にわたって追跡し、食事と腸内細菌の関連が一時的なものではないことを確認しました。82.5%の細菌種で、食事から予測される存在量と実際の存在量との間に有意な縦断的追跡が認められています。つまり、食習慣を変えれば腸内環境も持続的に変化する可能性が示されたのです。

さらに研究チームは、食事の変更が腸内細菌にどのような変化をもたらすかをシミュレーションする解析手法を開発しました。このシミュレーションでは、腸内細菌の変化を介して心血管代謝の健康指標が改善する方向への誘導が可能であることが示唆されています。

日常生活への示唆

この研究から、私たちが明日から意識できるポイントがいくつか浮かび上がります。

ただし、この研究はあくまで食事と腸内細菌の「関連」を示したものであり、特定の食品が特定の健康効果をもたらすと断定するものではありません。今後、パーソナライズドな食事介入が実際に疾病予防につながるかを検証する臨床試験が期待されます。


出典 Segev, T., Barak, D., Zahavi, L., Godneva, A., Rein, M., Krongauz, D., Samocha-Bonet, D., Rossman, H., Weinberger, A. & Segal, E. "Diet–microbiome associations in 10,068 individuals from the Human Phenotype Project to guide personalized nutrition." Nature Medicine (2026). DOI: 10.1038/s41591-026-04312-x

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