「座りすぎ」のリスクは歩数で取り戻せるか?

米国大規模研究が示す"1日あたりの歩数"の目安

調査レポート
「座りすぎ」のリスクは歩数で取り戻せるか?——米国大規模研究が示す"1日あたりの歩数"の目安

デスクワークや在宅勤務の普及により、私たちの座位時間はかつてないほど長くなっています。座りすぎが健康に悪いことは広く知られていますが、「では、どのくらい歩けばそのリスクを相殺できるのか」という問いに対しては、これまで明確な答えがありませんでした。2026年4月に Nature Communications に掲載された米国の大規模研究が、この問いに具体的な数値で応えています。

研究の概要

Zheng, N.S.らの研究チームは、米国国立衛生研究所(NIH)が推進する「All of Us Research Program」の参加者から得られたFitbitの長期装着データを解析しました。日々の歩数と座位時間(sedentary time)を縦断的に追跡し、11の慢性疾患の新規発症リスクとの関連を検討しています。

その結果、座位時間が長いほど、肥満、2型糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、心不全、慢性腎臓病、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、うつ病(大うつ病性障害)、睡眠時無呼吸症候群、心房細動の発症リスクが有意に上昇することが確認されました。

歩数による「リスク相殺」の可能性

特に注目すべきは、1日の座位時間が14時間の人と8時間の人を比較した場合、1日あたり追加で1,700〜5,500歩を歩くことで、多くの疾患における座位時間の超過リスクが相殺されるという知見です。必要な歩数は疾患によって異なりますが、比較的少ない追加歩数でもリスク軽減効果が認められた疾患が複数ありました。

ただし、重要な限界も示されています。冠動脈疾患と心不全については、いかなる歩数をもってしても座りすぎによるリスクを完全には相殺できませんでした。これは、心血管疾患の一部に対しては、単に歩く量を増やすだけでは十分ではなく、座位時間そのものを短縮するなど、別のアプローチも必要であることを示唆しています。

日常生活への示唆

この研究から私たちが明日から実践できることは明確です。

なお、本研究はウェアラブルデバイスのデータを活用した観察研究であり、因果関係を直接証明するものではありません。また、対象集団やデバイスの特性による限界もあります。それでも、実際の日常生活下で長期間にわたり客観的に測定されたデータに基づく知見として、その実用的価値は高いといえます。


出典: Zheng, N.S., Huang, S., Annis, J. et al. "Daily steps offset risks of sedentary behavior in the All of Us research program." Nature Communications (2026). DOI: 10.1038/s41467-026-71652-0

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