心臓病と脳疾患をつなぐ「共通のタンパク質」を大規模解析で特定

GDF15が臓器を超えた病気の鍵に

調査レポート

心臓の病気を抱える方が、やがて認知機能の低下や脳卒中といった神経疾患を併発するケースは珍しくありません。しかし、なぜ心臓と脳の病気が連動するのか、その生物学的なメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。このほど発表された大規模研究が、両臓器の疾患を結びつける「血中タンパク質」の全貌を初めて明らかにし、新たな治療ターゲットの可能性を示しました。

5万人超のデータから心臓と脳に関わるタンパク質を網羅的に解析

英国バイオバンクに登録された約5万3,000人の血漿プロテオミクス(タンパク質の網羅的解析)データと、約5万人の心臓・脳MRI画像データを組み合わせ、血中を循環するタンパク質と臓器の構造・機能の関連を系統的に調べました。

その結果、心臓の画像所見と関連するタンパク質が404種類、脳の画像所見と関連するタンパク質が76種類特定されました。さらに注目すべきことに、心臓と脳の両方に関連するタンパク質が37種類見つかりました。

90%以上が「未知のバイオマーカー」——GDF15が臓器横断的な鍵

研究チームがとりわけ注目したのが、GDF15(Growth Differentiation Factor 15)というタンパク質です。GDF15は心臓と脳の間の臓器横断的な関連27組のうち22組を媒介しており、両臓器の疾患をつなぐ中心的な因子であることが示されました。マウスを用いた検証実験でも、GDF15が心臓と脳の両方の病態に関与することが確認されています。

さらに、メンデルランダム化解析(遺伝情報を用いた因果推論の手法)により、特定されたタンパク質の63%以上が疾患の発症に因果的な役割を果たしている可能性が示されました。

特筆すべきは、今回同定されたタンパク質候補の90%以上が、これまで臨床バイオマーカーや治療標的として確立されていなかったという点です。つまり、心臓病や脳疾患の早期診断・治療に向けて、膨大な「未開拓の資源」が見つかったことになります。

これらのタンパク質は主に動脈血管壁の線維芽細胞、平滑筋細胞、マクロファージに由来しており、心臓関連のタンパク質はサイトカインや血管関連の経路、脳関連のタンパク質は細胞外マトリックスの経路に集中していました。

日常生活への示唆——「心臓を守ること」は「脳を守ること」

この研究は、心臓と脳の健康が血中タンパク質を介して密接にリンクしていることを分子レベルで裏付けています。私たちの日常生活にとって、これはシンプルで重要なメッセージを含んでいます。

今後、GDF15をはじめとする新たなバイオマーカーが臨床応用されれば、「心臓と脳を一体的に守る」予防医療の実現に一歩近づくことが期待されます。


出典: Wu, C., Li, D., Khetarpal, S.A. et al. "Large-scale identification of protein biomarkers and therapeutic targets in heart and brain disease." Nature Cardiovascular Research (2026). DOI: 10.1038/s44161-026-00799-2

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