メンタル不調による休職や業務効率の低下は、本人にとっても企業にとっても大きな負担です。2026年4月にJournal of Medical Internet Researchに掲載された最新研究では、インターネットで完結する認知行動療法(iCBT)が、労働者の欠勤・プレゼンティーズム・生産性損失をいずれも統計的に有意に減少させ、患者1人あたり年間4000ユーロを超える経済効果をもたらすことが示されました。
研究の概要
本研究はアイルランド国民保健サービス(HSE)が提供する自習型のiCBTプログラムの利用者データを用いた、大規模な自然観察的後ろ向き調査です。対象となった11,131名のうち、就労中の患者7,125名(64%)のデータが解析されました。参加者はうつや不安の症状を抱えながら働く人々で、iCBTのモジュールを数週間にわたって取り組み、治療前後の職場機能を標準的な尺度で測定されました。
主な結果は以下のとおりです。
- 欠勤(病気休業)が6.85%減少(p<.001、Cohen's d=0.21)
- プレゼンティーズム(出勤しているが十分に働けない状態)が5.84%減少(p<.001、Cohen's d=0.18)
- 総合的な生産性損失が9.48%減少(p<.001、Cohen's d=0.27)
効果量は小さめですが、大規模サンプルで一貫した改善が確認された点が重要です。経済的にも、患者1人あたり年間4000ユーロ超、サンプル全体で年間2930万ユーロに相当するコスト削減が推計されました。
日常生活への示唆
この研究が示すのは、メンタルヘルスのケアを「専門クリニックに通う特別なもの」と考える必要はない、ということです。スマホやPCから自分のペースで取り組めるiCBTでも、臨床的にも経済的にも意味のある改善が得られます。
明日から意識できることは、次の3点です。第一に、気分の落ち込みや不安が仕事のパフォーマンスに影響していると感じたら、我慢せず早めに相談やセルフヘルププログラムを検討してください。第二に、勤務先の健康保険組合やEAP(従業員支援プログラム)で、オンライン認知行動療法が利用できるか確認してみましょう。第三に、管理職の立場にある方は、メンバーのプレゼンティーズムを「やる気の問題」と片づけず、構造化された支援につなげる視点を持つことが、本人にも組織にも大きなリターンをもたらします。
メンタルヘルスへの早期アクセスは、もはや福利厚生ではなく経営戦略の一部になりつつあります。
出典
Lee CT, Harty S, Enrique A, Jiménez-Díaz A, Hisler G, Duffy D, Richards D. Changes in Workplace Productivity and Estimated Cost Savings During Internet-Based Cognitive Behavioral Therapy in the Irish National Health Service: Naturalistic, Repeated-Measures, Retrospective Survey Study. Journal of Medical Internet Research. 2026;28:e80689. DOI: 10.2196/80689 https://www.jmir.org/2026/1/e80689
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