毎日のマルチビタミンが「老化時計」を遅らせる

COSMOS試験958人の2年間RCTが示した意外な結果

調査レポート
毎日のマルチビタミンが「老化時計」を遅らせる——COSMOS試験958人の2年間RCTが示した意外な結果

サプリメントは本当に老化を遅らせるのでしょうか。長らく議論が続いてきたこの問いに、ハーバード大学を中心とする研究チームがNature Medicineで一つの答えを示しました。2年間の大規模ランダム化比較試験(RCT)の結果、毎日のマルチビタミン・ミネラル(MVM)摂取が、DNAメチル化に基づく「エピジェネティック老化時計」の進行を有意に遅らせることが明らかになりました。

研究の概要

研究チームは、米国で実施された大規模試験「COSMOS(COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study)」の付随研究として、958人の高齢者を対象に解析を行いました。参加者は、毎日のマルチビタミン(Centrum Silver)、ココアエキス(フラバノール500 mg、エピカテキン80 mg含有)、またはプラセボのいずれかを2年間摂取しました。評価指標は、血液DNAから測定される5種類のエピジェネティック老化時計です。

結果は明確でした。マルチビタミン摂取群では、第二世代のエピジェネティック時計の年間進行速度が、プラセボ群と比べて約0.113歳/年遅くなりました。2年間でおよそ2.7〜5.1ヶ月分の「老化の遅れ」に相当します。死亡リスク予測に用いられるPCPhenoAgeでは約2.6ヶ月、PCGrimAgeでは約1.4ヶ月の進行抑制が確認されました。一方、ココアエキスについては、いずれの時計でも有意な効果は認められませんでした。

日常生活への示唆

この結果は、シンプルなマルチビタミン摂取が高齢者の生物学的老化を緩やかにする可能性を示唆しています。ただし注意点もあります。第一に、効果の大きさは数ヶ月単位であり、劇的な「若返り」ではありません。第二に、エピジェネティック時計の変化が、実際の寿命や健康寿命の延長に直結するかは今後の検証課題です。第三に、バランスのよい食事から栄養素を摂取することが基本であり、サプリメントは食事を置き換えるものではありません。

それでも、食事から十分な微量栄養素を摂りにくい高齢者にとって、信頼できるマルチビタミンを継続することは、低コストかつ低リスクで生物学的老化に介入できる選択肢になり得るでしょう。一方、ココアやチョコレートに含まれるフラバノールについては、心血管系への効果は示唆されているものの、老化時計への影響は今回否定的でした。「何を信じ、何に投資するか」を見直す材料となる研究と言えます。

出典

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