ドラッグストアで気軽に買える市販薬(OTC)は、医師の処方を必要としないため「安全」と思われがちです。しかし処方薬と比べて規制が緩く、専門家の助言なしに使われることが多いという特性は、妊娠中・授乳中の女性にとって思わぬリスクとなり得ます。2026年4月、オランダの研究チームがこの情報ギャップを埋めるためのアプリ「MediMama」を開発し、JMIR mHealth and uHealth誌にその有用性を報告しました。
研究の概要
研究チームは、5段階の開発プロセス(準備・開発・実装前・実装・評価)を経て、妊娠中および授乳中の女性向けにOTC医薬品の安全性情報を提供する無料モバイルアプリMediMamaを構築しました。アプリ開発の初期段階では、潜在的なユーザー253人に対してアンケートやフォーカスグループを実施しています。注目すべきは、女性の77.2%が「OTC医薬品の情報を必要としているが、信頼できる情報源が見つからない」と回答した点です。
アプリには250以上のOTC医薬品が27カテゴリに分類されて収載されており、妊娠期・授乳期それぞれにおける安全性のエビデンスが平易な言葉で表示されます。リリース後1年間で22,415回ダウンロードされ、1日平均370人が利用しました。最も検索されたのはパラセタモール(アセトアミノフェン)と鼻スプレーで、まさに日常的に手が伸びやすい薬剤です。App Storeの評価はレビュー11件すべてが5つ星でした。
なぜOTC薬は処方薬と区別して考える必要があるのか
著者らが強調しているのは、OTC薬は処方薬と比べて入手が容易で規制が緩く、専門家の指導なしに使用される頻度が高いという点です。たとえばイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、妊娠後期に使用すると動脈管収縮、羊水過少症、胎児腎機能障害のリスク増加と関連する可能性が示唆されています。一方で、授乳中には実際には併用可能な薬剤も多く、情報不足ゆえに必要な治療を控えてしまうという逆方向の問題も指摘されています。
日常生活への示唆
この研究が私たちに教えてくれるのは、「市販されている=安全」ではないという基本原則です。明日からできることとして、次の点を意識してみてください。
第一に、市販薬を購入する前に薬剤師へ声をかける習慣をつけることです。妊娠中・授乳中はもちろん、複数の薬を併用している場合や慢性疾患を抱える場合にも、薬剤師との短い会話が重大な相互作用を防ぐ可能性があります。第二に、信頼できる情報源を意識的に選ぶことです。インターネット検索の上位記事ではなく、医療専門家が監修したアプリや、日本では国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」のような公的サービスを参照することが推奨されます。第三に、自己判断で長期連用しないことです。OTC薬は急性症状の短期使用を前提に承認されているため、症状が長引く場合は医療機関を受診することが望まれます。
OTCと処方薬の境界は規制上の便宜による区分にすぎず、薬理学的なリスクの大小を必ずしも反映していません。「処方箋がいらない」ことの本当の意味を理解することが、安全な自己医療の第一歩になると言えます。
出典
- 論文タイトル: Development and Launch of a Dutch Mobile App (MediMama) on Over-the-Counter Medication Safety During Pregnancy and Breastfeeding: Development and Usability Study
- 著者: Veronique YF Maas, Maud de Feijter, Anneke LM Passier ほか
- 掲載誌: JMIR mHealth and uHealth, 2026年4月2日公開
- DOI: 10.2196/85948
- URL: https://mhealth.jmir.org/2026/1/e85948
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