頭痛や生理痛、関節痛のときに気軽に手が伸びる市販の痛み止め。日本でもイブプロフェンやロキソプロフェンは処方薬と同じ成分が薬局で買えますが、「処方箋がいらない=安全」という思い込みには大きな落とし穴があります。エチオピア・ゴンダール市の771人を対象とした最新の住民調査で、その実態が浮き彫りになりました。
4人に3人がNSAIDsを使用、しかし副作用を知るのは半数だけ
この研究はエチオピア北西部の都市住民を対象に、2025年3〜5月に実施されたコミュニティ調査です。系統無作為抽出で771人を登録し、91.24%という高い回答率で得られたデータを多変量ロジスティック回帰で解析しています。
結果は明快でした。住民の74.6%が非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:イブプロフェン、ジクロフェナク、アスピリンなど)を使用していました。一方で、NSAIDsに副作用があることを知っていたのはわずか52.3%にとどまります。およそ半数が、消化管出血や腎機能障害、心血管イベントなど、重篤な副作用がありうることを知らないまま薬を口にしている計算になります。
使用頻度が高い層には特徴があり、49歳以上(調整オッズ比1.28)、退職者(同1.51)、消化器疾患をすでに持っている人(同2.44)、心疾患を持つ人(同1.58)、元喫煙者(同1.87)で有意に高い使用率が観察されました。本来ならばNSAIDsの副作用リスクが上がる集団ほど、むしろ服用率が高いという逆説的な構造が示されています。
処方薬と市販薬の境界は「成分」ではなく「監視の有無」
NSAIDsの危険性は新しい発見ではありません。長期連用で胃潰瘍や腎障害、高血圧の悪化、心筋梗塞のリスクが上がることは、繰り返し報告されています。それでも市販薬として流通しているのは、短期・低用量であれば一般に安全と判断されているためであって、「副作用がない」からではありません。
つまり処方薬と市販薬の本質的な違いは、成分そのものではなく、医師や薬剤師による「使い方の監視」があるかどうかにあると言えます。今回の研究は、その監視が外れた途端、ハイリスク群ほど薬に頼り、リスクの認識は半数しか持っていないという現実を示しました。
明日からできること
胃痛・胸やけ・むくみ・血圧上昇など、痛み止めの服用後に普段と違う体調変化を感じたら、それは副作用のサインかもしれません。市販のNSAIDsを使うときには、添付文書を必ず読み、連用は3〜5日までを目安にしましょう。胃腸が弱い方、高血圧や腎臓・心臓に持病がある方、65歳以上の方は、購入時に薬剤師へ相談する習慣を持つと安全性が高まります。アセトアミノフェン(カロナール等)は胃や腎臓への負担が少ないため、選択肢として知っておくとよいでしょう。
「薬局で買える=自己責任で自由に使ってよい」ではなく、「薬局で買える=正しい知識を自分で持つ責任がある」と捉え直すことが、市販薬を安全に使う第一歩と言えます。
出典
Pattern of use and awareness of side-effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs among general public in Gondar city, North west Ethiopia. Scientific Reports (2026). DOI: 10.1038/s41598-026-42630-9 URL: https://www.nature.com/articles/s41598-026-42630-9
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