SNSの薬の広告が外来の景色を変えている

処方薬リクエストの最前線で何が起きているか

調査レポート
SNSの薬の広告が外来の景色を変えている——処方薬リクエストの最前線で何が起きているか

風邪薬や鎮痛剤のようなOTC薬と違い、処方薬は本来、医師の判断を介して患者の手に届くものです。ところが近年、TikTokやInstagramでGLP-1痩身薬などの処方薬の広告や投稿があふれ、患者が「あの薬を出してほしい」と来院前から指名するケースが急増しています。米国の医療従事者と医学生を対象とした最新の調査が、その実態を可視化しました。

研究の概要

JMIR Formative Researchに2026年4月23日に掲載された論文(Willisら, DOI: 10.2196/91024)は、医学生・研修医・現役医師・ナースプラクティショナーを含む98名(医学生85名、研修医5名、医師6名、NP2名)を対象に、SNS上の医薬品広告に起因する患者のリクエスト頻度や受け止め方を調査しました。対面診療のみを行う臨床家と、対面とオンライン診療を併用する臨床家を比較した点が特徴です。

何がわかったか

オンラインと対面の両方で診療を行うグループは、SNS広告由来の処方薬リクエストを受ける頻度が有意に高く、平均スコアは3.15であったのに対し、対面のみのグループは2.64でした。とくに名指しで要望が多かったのは、セマグルチドやウゴービ、ゼップバウンドといったGLP-1受容体作動薬で、肥満治療の話題が患者の関心を強く牽引していることが示されました。著者らは、デジタル広告が外来に入ってくる前から患者の期待値を形成しており、とりわけバーチャル診療の場面でその影響が顕著だと指摘しています。

OTCと処方薬の境界が揺らぐ時代に

OTC薬は店頭で自ら選ぶ前提があり、副作用や飲み合わせは原則として消費者の自己判断に委ねられます。一方、処方薬は本来、医師による適応評価とリスク説明を経るのが大原則です。しかし、SNS上ではOTCも処方薬も区別なく「効きそうな薬」として横並びに紹介されがちで、患者は両者の重みの違いを意識しないまま受診に至ることがあります。今回の研究は、その境界線の曖昧化が、診療現場での会話のスタートラインを大きく変えつつあることを示しています。

日常生活への示唆

SNSで医薬品の情報に触れたとき、まず「これはOTCか処方薬か」を確認することが第一歩となります。処方薬であれば、広告で語られる効果だけでなく、適応となる病態、副作用、他剤との相互作用が必ず存在します。受診時には、見た投稿のスクリーンショットを持参してもよいですが、「この薬が欲しい」ではなく「自分の症状にこの薬が合うか相談したい」という尋ね方に切り替えると、医師と建設的な対話になりやすくなります。OTC薬についても、便利さの裏にリスクがあることはこれまで取り上げてきたとおりで、SNS発の情報を鵜呑みにしないリテラシーが、処方薬・OTCを問わず重要性を増しています。

出典

Willis E, Tham SM, Applequist J, Fouts D, Ali A, Mulkey C, Shaver N. Medical Students and Clinicians' Perceptions of Social Media Direct-to-Consumer Advertising and Medication Requests. JMIR Formative Research. 2026年4月23日公開. DOI: 10.2196/91024. URL: https://formative.jmir.org/2026/1/e91024

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