女性の免疫は加齢でより大きく変化する

982人の単一細胞解析が示した「免疫老化の性差」

調査レポート
女性の免疫は加齢でより大きく変化する——982人の単一細胞解析が示した「免疫老化の性差」

風邪の治りやすさや自己免疫疾患のかかりやすさが男女で異なることは経験的に知られていますが、その背後にある「免疫の老い方そのものに性差がある」可能性が、最新の単一細胞解析で明らかになりました。Nature Aging誌に2026年4月10日に掲載されたバルセロナ・スーパーコンピューティング・センター(BSC)の研究によると、女性の免疫システムは男性に比べてはるかに大きな加齢変化を遂げていることが示されています。

研究の概要

研究チームは、成人期の女性と男性あわせて982人から得られた末梢血単核球を対象に、単一細胞RNAシークエンシングを実施しました。100万個を超える血液細胞について、およそ2万種類の遺伝子発現を網羅的に測定したと報告されています。これは性差に注目した免疫老化研究としては過去最大規模に位置づけられます。

解析の結果、加齢に伴う細胞構成や遺伝子発現の変化は、女性のほうが男性よりも顕著であることが示されました。女性では、細胞傷害性のCD8陽性エフェクター記憶T細胞や炎症性単球が拡大し、自己免疫に関わるCD4陽性中央記憶T細胞集団にも年齢依存的なシフトが認められたと報告されています。一方で男性の一部では、慢性リンパ性白血病の無症候性前駆状態に類似したB細胞集団が加齢とともに増加する傾向が示されました。

研究チームは、こうした性差が、自己免疫疾患の患者の約8割が女性であることや、特定の血液がんが高齢男性に多いことを生物学的に説明しうると考察しています。「免疫老化の地図」を性別ごとに描き直す試みとして、精密医療における性差の重要性を改めて浮き彫りにする成果と言えます。

日常生活への示唆

この研究は基礎科学の段階ですが、健康管理の視点でも示唆に富みます。女性は更年期前後から炎症性免疫細胞が増えやすい可能性が示されているため、慢性炎症を抑える生活習慣——十分な睡眠、定期的な有酸素運動、野菜や食物繊維を中心とした食事、禁煙、適正飲酒——を意識的に続ける価値はいっそう高いと考えられます。また、関節リウマチや甲状腺疾患など自己免疫関連の症状を自覚した際には、年齢のせいと片づけず早めに専門医に相談することが勧められます。男性では、加齢とともに血液検査でリンパ球の異常が指摘された場合、軽視せず経過観察を受けることが望ましいと言えます。

健康診断や人間ドックの結果を「年齢相応かどうか」で判断する際にも、男女で老い方の質が異なるという視点を持つと、自分の体への理解が一段深まるのではないでしょうか。

出典

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