薬の情報をどこから得るかは、安全な使用に直結する重要な問題です。処方薬であれば医師や薬剤師が丁寧に説明してくれますが、市販薬(OTC)はドラッグストアで自分で選び、自分で判断します。この「情報の非対称」がどれほど深刻なのか、JMIR誌に2026年5月20日に掲載されたフィンランドの研究チームによる体系的レビューが、10ヶ国・約2万人のデータを統合して明らかにしました。
研究の概要
ヘルシンキ大学のNiina Mononenらは、2010年から2025年までに先進国で行われた26件の研究(参加者総数19,891名)を統合解析しました。対象はヨーロッパ16件、米国6件、オーストラリア3件などで、18歳以上の成人医薬品利用者がどこから薬の情報を得ているかを調べたものです。
最大の発見は、処方薬と市販薬で情報入手の構造が大きく異なる点でした。処方薬の場合、医師から情報を得る人が69〜72%、薬剤師からは71〜83%と高水準で、添付文書も主要な情報源として機能しています。一方、市販薬では薬剤師が最大の情報源ではあるものの、「消費者は購入時に積極的な口頭説明を受けないことが多い」と指摘され、添付文書を読む率も低い傾向が示されました。
さらに衝撃的なのは、回答者の28%が「どの情報源からも薬の情報を受け取っていない」と回答した点です。また、処方薬利用者の47%が「相反する情報を受け取った経験がある」と答え、そのうち34〜39%が薬の中止や指示通りに服用しない行動につながっていました。インターネット利用者は14〜68%(調査方法により幅あり)で、若年・高学歴層に多い傾向が確認されました。
日常生活への示唆
この研究は、市販薬を「自分で選べる薬」と捉える私たちの行動に警鐘を鳴らしています。処方薬を受け取るときには医師・薬剤師から十分な説明があるのに対し、市販薬は能動的に質問しないと情報が得られない構造があるのです。
明日からできることとして、まず市販薬を購入する際には、面倒でも薬剤師カウンターで「いま服用中の薬と併用して大丈夫か」「自分の症状にこの薬が適しているか」を口頭で確認することをおすすめします。添付文書は購入後に必ず目を通し、用法・用量・副作用の項目をチェックしてください。また、ネット情報で迷ったときは、矛盾を解消するために必ず薬剤師または医師に再確認することが重要です。「市販薬だから簡単」ではなく、「市販薬だからこそ自分から情報を取りに行く」姿勢が、安全な自己治療の第一歩と言えます。
出典
Mononen N, Salo MM, Timonen D, Pohjanoksa-Mäntylä M, Airaksinen M. Receipt of Medicines Information From the Internet and Other Information Sources Among Adult Medicine Users in Developed Economies, 2010-2025: Systematic Review. Journal of Medical Internet Research. 2026;28:e71984. DOI: 10.2196/71984 https://www.jmir.org/2026/1/e71984
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