毎日のマルチビタミンが「生物学的年齢」を遅らせる

958人・2年間のCOSMOS試験がNature Medicineに発表

調査レポート
毎日のマルチビタミンが「生物学的年齢」を遅らせる——958人・2年間のCOSMOS試験がNature Medicineに発表

年齢を重ねることは止められませんが、「老化の速度」は変えられるかもしれません。これまでサプリメントの効果は経験談や曖昧な指標で語られがちでしたが、今回ご紹介する研究は、DNAメチル化を指標とした「エピジェネティック時計」という客観的な物差しで、マルチビタミンが本当に老化を遅らせるかを検証しました。Nature Medicine 2026年5月号に掲載された大規模臨床試験の結果は、日々の小さな習慣が生物学的な若さに直結する可能性を示しています。

何を調べた研究なのか

この研究はマサチューセッツ総合病院ブリガム傘下のチームが実施した「COSMOS試験」のサブ解析です。対象は健康な高齢者958人(平均年齢70歳)で、参加者は次の4群にランダムに振り分けられました。すなわち、(1)マルチビタミン+カカオエキス、(2)カカオエキス+プラセボ、(3)マルチビタミン+プラセボ、(4)プラセボのみの4群です。試験期間は2年間で、開始時と2年後に血液を採取し、DNAメチル化パターンから生物学的年齢を推定する5種類のエピジェネティック時計を測定しました。

何がわかったのか

解析の結果、毎日マルチビタミンを服用していた群では、プラセボ群と比べてエピジェネティック時計の進行が緩やかになっていました。効果量はおよそ「2年間で4か月ぶんの老化が抑えられた」というレベルです。一見小さく感じる数字ですが、第二世代のエピジェネティック時計(PhenoAgeやGrimAgeなど、死亡率や疾病リスクと相関する指標)でも一貫して同じ方向の結果が出た点が注目されます。さらに興味深いのは、「実年齢よりも生物学的に老けている人ほど効果が大きかった」という所見です。つまり、もともと加齢が早く進んでいた人にとって、マルチビタミンは追いついて補正する役割を果たした可能性があります。一方、カカオエキス単独では明確な効果は確認されませんでした。

日常生活への示唆

この研究は「マルチビタミンを飲めば若返る」という単純な話ではありません。あくまで2年間で約4か月という穏やかな効果ですし、対象は健康な70歳前後の方々です。それでも、栄養が偏りがちな高齢期において、ベーシックなビタミン・ミネラルを安定して補うことには、思っていた以上の意義があるかもしれません。明日からできることとしては、まず食事の質を点検し、緑黄色野菜・魚・全粒穀物・乳製品などをバランスよくとれているかを見直すことが第一です。そのうえで、食事だけでカバーしきれない場合に、過剰摂取を避けつつ標準的なマルチビタミンを取り入れる、という順序が現実的でしょう。サプリメントは食事の代わりではなく、隙間を埋める存在として位置づけることが大切と言えます。

出典

Li S, Hamaya R, Zhu H, Chen BH, Pereira AC, Ivey KL, Rist PM, Manson JE, Dong Y, Sesso HD. Effects of daily multivitamin–multimineral and cocoa extract supplementation on epigenetic aging clocks in the COSMOS randomized clinical trial. Nature Medicine. 2026;32(3):1012. DOI: 10.1038/s41591-026-04239-3

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