拒食症の腸内細菌を「移植」で整える

成人女性を対象としたデンマーク発の予備臨床試験

調査レポート
拒食症の腸内細菌を「移植」で整える——成人女性を対象としたデンマーク発の予備臨床試験

神経性食欲不振症(拒食症)は治療が難しく、再発率も高い精神疾患です。近年、この病気が単なる「心」の問題ではなく、腸内細菌叢の乱れと深く関わっている可能性が報告されてきました。デンマークの研究チームが2026年1月、成人女性の拒食症患者に対して便微生物叢移植(FMT)を行った予備臨床試験の結果をNature Communicationsに発表しました。

この試験はオープンラベルの実現可能性試験として実施され、神経性食欲不振症と診断された成人女性が対象となりました。研究プロトコルではBMI 13〜19 kg/m²の女性が組み入れ基準とされています。参加者には健常ドナー由来の便微生物製剤が、経口カプセルまたは経直腸的注入のいずれかで一回投与されました。投与後、腸内細菌叢の変化、便性状、栄養状態の指標、気分や不安の変化などが追跡されました。

結果として、単回のFMTは安全に実施でき、重篤な有害事象は報告されませんでした。腸内細菌叢の構成はドナーの「健常型」プロファイルへとシフトし、酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する有益菌の増加が確認されたとされています。さらに、便性状の改善に加えて、栄養状態の指標や気分にも軽度の改善傾向が認められました。ただし著者らは、サンプル数が小さい予備試験であるため結果は慎重に解釈する必要があると強調しています。

この知見は、拒食症治療における新たな視点を示しています。これまで拒食症の治療は精神療法と栄養回復が中心でしたが、腸内環境を整えることが回復過程を後押しする可能性が示唆されたことになります。短鎖脂肪酸は腸管バリアを強化し、全身の炎症を抑え、腸脳軸を介して気分にも影響を与えると考えられているためです。

日常生活への示唆としては、拒食症に限らず、過度な食事制限が腸内細菌叢を貧弱にし、心身の不調につながる可能性を意識することが大切です。健康な腸内環境を保つためには、食物繊維を含む野菜、豆類、全粒穀物、発酵食品を多様にとり、極端な単一食や絶食を避けることが基本となります。また、自分や身近な人が摂食障害に悩んでいる場合には、心の問題として一人で抱え込まず、専門医療機関への相談を検討することが望まれます。腸と脳は双方向につながっていることを忘れないでください。

出典: Panah, F.M., Støving, R.K., Sjögren, M. et al. Impact of a single fecal microbiome transplantation in adult women with anorexia nervosa: an open-label feasibility pilot trial. Nature Communications (2026). DOI: 10.1038/s41467-026-68455-8 URL: https://www.nature.com/articles/s41467-026-68455-8

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