脳梗塞の「広がり」を抑える

血栓回収にアルブミン点滴を加えると梗塞の拡大が半減、中国の二重盲検試験

調査レポート
脳梗塞の「広がり」を抑える——血栓回収にアルブミン点滴を加えると梗塞の拡大が半減、中国の二重盲検試験

脳の太い血管が詰まる脳梗塞では、詰まった血栓をカテーテルで取り除く「血栓回収療法(血管内治療)」が標準治療として確立しています。しかし、血流を再開できても、その後に梗塞が周囲へじわじわ広がってしまう患者さんは少なくありません。今回、ありふれた血液製剤である「アルブミン」を点滴で加えると、この梗塞の拡大を大きく抑えられる可能性が、中国の多施設・二重盲検ランダム化比較試験で示されました。Nature Communicationsに掲載された注目の成果です。

研究チームは、前方循環の太い血管が詰まった急性脳梗塞の患者さん134人を対象としました。発症から24時間以内で、梗塞のもとになる中心部の体積が100mL以下といった条件を満たす方々です。参加者はくじ引きのように2つのグループに分けられ、66人が標準の血管内治療に加えてアルブミン(1日あたり体重1kgにつき0.5g、最大150mL)を4日間点滴され、68人は見た目の区別がつかない偽薬(プラセボ)を投与されました。患者さんも医師も、どちらが投与されたかわからない厳密な二重盲検デザインが採られています。

主要な評価項目は、治療開始時から5日目までの梗塞体積の増え方でした。結果として、プラセボ群では梗塞体積が中央値で16.5mL拡大したのに対し、アルブミン群では7.5mLの拡大にとどまりました。年齢や重症度などの影響を調整した解析でも、アルブミン群のほうが梗塞の拡大が約8.6mL小さく(95%信頼区間 −13.85〜−5.07mL、P=0.003)、統計学的にも明確な差が認められています。さらに、出血などの安全性に関する指標は2つのグループで差がなく、アルブミンを加えても危険性が高まるわけではないことが示唆されました。

アルブミンは血液中に最も多く含まれるたんぱく質で、輸液などとして医療現場で長年使われてきた、入手しやすく比較的安価な薬剤です。なぜ脳を守るのかは完全には解明されていませんが、血液の浸透圧を保って脳のむくみを抑えたり、傷ついた血管や神経を保護したりする働きが関与すると考えられています。今回の試験は134人と規模が限られた段階のものであり、最終的に後遺症の程度や生活の自立度をどこまで改善するかは、より大規模な試験での検証が待たれます。

私たち一般の生活者にとって最も大切なのは、脳梗塞は「時間との勝負」だという点です。今回有効性が示された血栓回収療法もアルブミンも、発症からできるだけ早く治療を始めてこそ意味を持ちます。顔の片側がゆがむ、片腕に力が入らない、ろれつが回らない——こうした症状が突然現れたら、ためらわずにすぐ救急車を呼ぶことが、脳を救う最初の一歩になります。新しい治療法の進歩は心強い一方で、それを生かせるかどうかは、最初の数時間の行動にかかっていると言えます。

出典 論文タイトル: Efficacy and safety of albumin combined with endovascular therapy in the treatment of patients with acute ischemic stroke: a randomized clinical trial 掲載誌: Nature Communications(2026年) DOI: 10.1038/s41467-026-72270-6

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