何を食べるかだけでなく、いつ食べるか。近年注目を集める「時間制限食(タイムリストリクテッド・イーティング)」が、健康寿命だけでなく寿命そのものを延ばす可能性が、大規模なマウス実験で示されました。しかもその効果には、はっきりとした性差があったのです。テキサス大学サウスウエスタン医療センターの研究チームが、Nature Agingに報告しています。
研究チームは、C57BL/6Jという系統のマウス528匹(オス264匹、メス264匹)を生涯にわたって追跡しました。注目すべきは、太りやすい高脂肪食ではなく、ごく標準的なエサを使った点です。マウスは3つのグループに分けられました。いつでも自由に食べられる対照群、活動期である夜間の12時間だけ食べられる群、そして夜間の8時間だけに食事を絞った群です。
結果として、食事時間を絞ったグループでは、体重や体組成、フレイル(虚弱)の指標、行動リズム、そして病気の発症時期といった多くの健康指標が改善しました。とくに効果が大きかったのは、食べられる時間が最も短い8時間群でした。この群では、結果的に摂取カロリー自体もやや減っていたことが分かっています。
最も興味深いのは寿命への影響です。オスの8時間群では、中央寿命(半数が生存する日数)が約12%延びました。一方、メスでは健康に過ごせる期間の改善はより顕著だったものの、寿命そのものの有意な延長は見られませんでした。さらに、加齢に伴って増える病気のパターンにも違いがあり、メスでは腎臓の病気が、オスでは腫瘍が目立つなど、老化の現れ方そのものに性差があることが示唆されています。
この研究が私たちに教えてくれるのは、食事のタイミングが老化のスピードに影響しうるという可能性です。ただし注意も必要です。今回はマウスでの結果であり、人間にそのまま当てはまるわけではありません。また、効果の大きさや方向性が性別によって異なる点は、ヒトでの研究を考えるうえでも重要な視点と言えます。
それでも、私たちが日常で取り入れられるヒントはあります。夜遅い時間の飲食を控え、食事を活動時間帯のなかに収めるという習慣は、体内時計を整えるうえで理にかなった選択と考えられます。極端な絶食に走るのではなく、まずは「食べる時間の窓」を意識することから始めてみてはいかがでしょうか。
出典 論文タイトル: Time-restricted feeding extends healthspan in both sexes and lifespan in male C57BL/6 J mice 著者: Samantha E. Iiams, Nathan J. Skinner, Victoria A. Acosta-Rodríguez, Mary Wight-Carter, Carla B. Green, Joseph S. Takahashi(テキサス大学サウスウエスタン医療センター) 掲載誌: Nature Aging(2026年) DOI: 10.1038/s43587-026-01129-8
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