「体にも環境にもよい食事は、お金がかかるし味気ない」——そんなイメージを持っている方は多いかもしれません。ところが2026年7月にNature Foodに掲載された研究は、その常識をていねいに検証し、赤身肉と乳製品を少し減らすだけで、健康・家計・環境のいずれもが同時に改善しうることを示しました。しかも食費はむしろ下がる可能性が示されています。
どんな研究なのか
研究チームは、2021年スコットランド健康調査に参加した16歳以上の成人3,447人の実際の食事記録をもとに、コンピューター上で食生活を変化させる「マイクロシミュレーション」という手法を用いました。イギリスの気候変動委員会が掲げる肉・乳製品の削減目標を達成するために、赤身肉や加工肉、乳製品をどの食品に置き換えるかを変えた合計35通りの道筋を比較し、約54種類の栄養素の摂取量、2型糖尿病や心血管疾患の発症、肥満、死亡、食費、そして温室効果ガスなどの環境負荷がどう変わるかを試算しています。
わかったこと
多くの道筋で、健康・環境・大半の栄養状態が、食費を増やすことなく改善しました。とくに効果が大きかった道筋では、10年間でスコットランド全体の2型糖尿病がおよそ5万9千件(年間発症のおよそ4分の1に相当)、心血管疾患がおよそ1万9千件(5.8%)減り、死亡も約2,240件少なくなると推計されました。1人あたりの食費はむしろ1日あたり0.41ポンド安くなる計算です。温室効果ガス排出量や土地・水の使用量も、すべての道筋で減少しています。
ただし注意点も示されました。肉や乳製品を減らすと、カルシウムがおよそ10%、ヨウ素がおよそ11%、たんぱく質が1日9.1グラムほど減る道筋もあり、置き換え方を工夫しないと不足しかねない栄養素が出てきます。効果を高める鍵は、赤身肉や加工肉を多く食べている人がそこを重点的に減らし、野菜や豆類、卵、植物性の代替食品などに置き換えることだと報告されています。
明日からできること
この研究は集団全体を対象にした推計であり、個人の結果を保証するものではありません。それでも、示された方向性はとてもシンプルです。まずは赤身肉や加工肉を食べる回数を少し減らし、その分を豆や野菜、卵などに置き換えてみることです。同時に、カルシウムは乳製品の代替として小魚やカルシウム強化された植物性ミルクで、ヨウ素は海藻などで補うと、栄養面の弱点をふさぎやすくなります。我慢や出費を増やさなくても、健康と環境の両方に前向きな一歩を踏み出せる可能性が示されたと言えます。
出典
論文タイトル: Reduced meat and dairy consumption improves health, environmental and most nutritional outcomes without increasing diet costs among Scottish adults 著者: Kennedy J, Clark M, Stewart C, ほか 掲載誌: Nature Food(2026年7月6日公開) DOI: 10.1038/s43016-026-01384-3
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