野菜・豆・全粒穀物中心の食事が「敗血症」を遠ざける

約20万人の英国データが示した、意外な感染症予防のかたち

調査レポート
野菜・豆・全粒穀物中心の食事が「敗血症」を遠ざける——約20万人の英国データが示した、意外な感染症予防のかたち

敗血症は、感染をきっかけに全身の炎症が暴走し、臓器が急速にダメージを受ける命に関わる状態です。これまで「食事で防ぐ」という発想はあまり結びつけられてきませんでした。ところが約20万人を追跡した最新の研究で、植物性食品を中心とした食生活が敗血症のリスクを下げる可能性が示されました。しかも、その効果は生まれ持った遺伝的な体質とは関係なく現れていたのです。

この研究は、英国の大規模コホート「UKバイオバンク」に参加した199,085人のデータを解析したものです。研究チームが注目したのは、EAT-Lancet食(プラネタリーヘルスダイエット)と呼ばれる食事パターンへの適合度でした。これは、野菜・果物・全粒穀物・豆類・ナッツや種子を豊富に取り入れ、赤身肉や加工肉、塩分の多い食品を控えることを基本とする、人と地球の両方の健康を意識した食べ方です。

追跡期間中に生じた敗血症の発症を、入院記録のICD-10コードから特定し、食事の適合度との関連が調べられました。その結果、EAT-Lancet食への適合度が高い人ほど敗血症のリスクが低く、最も高いグループでは発症リスクが15%低いという関連が示されました(ハザード比0.85、95%信頼区間0.78〜0.93、傾向性の検定でP<0.01)。

特に注目すべき点が二つあります。一つは、この関連が遺伝的な敗血症リスクの高い人・低い人のいずれでも一貫して認められたことです。つまり体質にかかわらず、食生活を整えることで得られる恩恵があると示唆されています。もう一つは、血液中の43種類のたんぱく質がこの関連を仲介していた点です。それらの多くは免疫や炎症に関わるたんぱく質であり、植物中心の食事が体内の炎症状態を穏やかに保つことで、感染への過剰な反応を抑えている可能性が考えられます。

この研究は観察研究であるため、食事だけが原因と断定することはできません。それでも、日常の食卓が感染症の重症化とつながりうるという視点は、私たちにできることを具体的に示してくれます。まずは一日の食事に豆類やナッツを一品加える、白米を雑穀や全粒のものに置き換える、肉料理の一部を野菜や大豆製品に振り替えるといった、小さな見直しから始められます。特別な食材や厳格な制限は必要なく、無理のない範囲で植物性食品の割合を増やしていくことが、長い目で見た健康の底上げにつながると考えられます。

日々の一皿の積み重ねが、目に見えない免疫の働きまで支えているのかもしれません。今日の献立から、少しだけ植物性の食品を意識してみてはいかがでしょうか。

出典 論文タイトル: Adherence to the EAT-Lancet Diet and Risk of Sepsis: A Prospective Cohort Study from the UK Biobank 掲載誌: npj Science of Food(2026年) DOI: 10.1038/s41538-026-00795-7 URL: https://www.nature.com/articles/s41538-026-00795-7

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