血液のたんぱく質が語る「本当の年齢」

1万7千人・最長28年の追跡が示した、老化速度を左右する生活習慣

調査レポート
血液のたんぱく質が語る「本当の年齢」——1万7千人・最長28年の追跡が示した、老化速度を左右する生活習慣

健康診断の数値が正常でも、体の内側では人より速く老化が進んでいることがあります。血液中のたんぱく質から「生物学的年齢」を推定する大規模研究が、2026年6月29日にNature Agingに発表されました。ヨーロッパの2つのコホートを最長28年追跡した解析から、老化の速さが喫煙・飲酒・運動不足と結びつき、病気や死亡のリスクを発症の約20年前から映し出す可能性が示されました。

何を調べた研究でしょうか

研究チームは、EPIC研究(がんと栄養に関するヨーロッパ前向き調査)の参加者17,473人を解析しました。参加者は登録時35〜75歳で、スペイン、イタリア、英国、ドイツ、オランダから集められ、追跡期間は最長28年に及びます。

血液サンプルはSomaScanという手法で多数のたんぱく質が測定され、すでに報告されている5種類の「プロテオミクス時計」(Tanaka、Lehallier、Sathyan、Oh、Wangの各クロック)で生物学的年齢が推定されました。研究チームはこれら5つの予測を平均し、総合指標となる「グローバル・クロック」を作成しています。さらに免疫、腎臓、肺、心臓、脳などの臓器別の老化指標も評価され、結果はWhitehall II研究の6,240人(追跡23年)でも再現が確認されました。

わかったこと

注目されるのは、実年齢より生物学的年齢が進んでいる度合い(エイジ・ギャップ)が1年分大きくなるごとに、全死亡リスクが13%高くなっていた点です。エイジ・ギャップは心血管疾患や脳卒中、認知症、さらに肝臓、上部気道消化器、肺、腎臓のがんのリスク上昇とも関連していました。死亡リスクの予測精度は、従来から使われている古典的なリスク因子と同程度だったと報告されています。

生活習慣との関係も明確に出ています。1日16本以上の重い喫煙、1日60gを超えるエタノール摂取に相当する多量飲酒、そして身体活動の不足が、いずれも老化の加速と関連していました。重い喫煙者は非喫煙者に比べ、生物学的年齢が約14か月分先に進んでいたと報告されています。一方で、BMIと食事の質については、グローバルなエイジ・ギャップとの関連は認められませんでした。

日常生活への示唆

まず、喫煙が最も大きく老化を押し上げていた点に注目したいところです。禁煙や減煙は、将来の病気を防ぐだけでなく、老化そのものの速度に働きかける行動と言えます。飲酒量を見直すこと、座っている時間を減らして体を動かすことも、同じ方向の対策になります。

BMIと食事の質に関連が見られなかった点は意外に思えますが、これはこの解析で使った指標がそれらの影響を捉えきれなかった可能性を含んでいますので、体重管理や食生活を軽視してよいという意味ではありません。

また、これは観察研究であり、生活習慣が老化を速めたという因果関係を証明したものではありません。プロテオミクス時計もまだ研究段階の指標であり、個人の老化度を判定する臨床検査として確立したわけではないという点にはご注意ください。それでも、発症の20年ほど前からリスクの差が血液に現れていたという事実は、今日の生活習慣が数十年先の健康を静かに形づくっていることを教えてくれます。

出典

論文タイトル: Associations of proteomic age clocks with lifestyle risk factors, incident chronic diseases and mortality in two European cohorts 著者: Oliver Robinson、Hanzhi Xiao、Julian Homann ほか(責任著者: Marc J. Gunter) 掲載誌: Nature Aging(2026年6月29日オンライン公開) DOI: 10.1038/s43587-026-01163-6

キバロクは予防医療×データの実装を支援します

こうした研究知見を、貴社の健康経営・健保事業・人間ドック施設の現場でどう使うか — 医師・医学博士×データサイエンティストが外部顧問として伴走します。まずは30分の無料相談から。

無料相談を予約する
調査レポート一覧に戻る