頭痛は神経の痛み、肩こりは筋肉の痛みと、私たちはつい別々のものとして考えがちです。しかし脳と首をつなぐ神経回路の研究が進むにつれ、この二つを切り分ける発想そのものが見直されつつあります。今回ご紹介するのは、片頭痛や緊張型頭痛を持つ人の首の筋肉に、MRIでしか見えない微細な変化が起きていることを示した研究です。
手で押して探す時代から、数値で捉える時代へ
首や肩の筋肉が頭痛に関わっていることは、以前から臨床の現場で知られていました。首の筋肉から出た痛みの信号は、頸髄の神経を通って三叉神経の情報と合流します。この合流地点は三叉神経頸髄複合体と呼ばれ、首の筋肉の状態が頭の痛みに影響しうる通り道になっています。
ただし、これまで筋肉側の関与を確かめる方法は、専門家が指で押して圧痛点を探す触診しかありませんでした。再現性に限界があり、数値として記録できないという課題が残っていました。
ドイツ・ミュンヘン工科大学などの研究チームは、この課題に画像解析で挑みました。18歳から30歳までの71人(頭痛のない健康な人22人、片頭痛21人、緊張型頭痛16人、両方を併せ持つ人12人)を対象に、3テスラMRIで僧帽筋の上部を撮影しています。使ったのはT2マッピングという手法で、炎症に伴うごくわずかなむくみを数値として捉えられます。さらにテクスチャ解析を加え、筋肉内部のばらつき具合まで数量化しました。
頭痛の日数が多い人ほど、筋肉の数値が高い
結果として、頭痛のある人たちの僧帽筋のT2値は平均31.10ミリ秒で、頭痛のない人たちの30.14ミリ秒より有意に高いことが示されました。差はわずかですが統計的にはっきりしており、頭痛の有無を見分ける指標としての精度はAUCで0.75でした。筋肉内部のばらつきを表すテクスチャ指標にも複数の差が認められています。
さらに注目されるのは、この数値が症状の重さと結びついていた点です。T2値は直近3か月間の頭痛日数と有意に関連し、テクスチャ指標の一つは首の痛みの有無と関連していました。主成分分析では、頭痛日数・首の痛み・筋肉の数値が同じ方向にまとまり、週あたりの睡眠時間と運動時間はほぼ反対の方向に位置していたと報告されています。
興味深いことに、触診で数えた圧痛点の数は、これらの画像指標のいずれとも関連しませんでした。手で探る所見と、画像が捉える筋肉の変化は、必ずしも同じものを見ていない可能性が示唆されます。
明日から意識できること
この研究は横断的なもので、参加者は若年層に偏り、女性が多く、頭痛の起きていない時期だけを調べています。したがって、睡眠や運動が筋肉の状態を改善するという因果関係までは示していません。それでも、日常に持ち帰れる視点はあります。
頭痛が続いているときに首や肩の痛みも一緒にあるなら、それを無関係な肩こりとして切り離さず、受診時にあわせて伝えてみてください。現在の国際的な頭痛の診断基準では、首の関与は標準では考慮されていないため、自分から情報を出す意味があります。
また、押して痛む場所が見つからないからといって、筋肉が無関係とは限らないことも今回の結果が示しています。痛みの出どころを自己判断で決めつけず、睡眠時間や体を動かす習慣といった土台の部分を整えながら、経過を記録していく姿勢が役に立つと考えられます。
出典
論文タイトル: Texture analysis on muscle T2 maps can reveal changes in upper trapezius muscles related to primary headache disorders 掲載誌: Scientific Reports 著者: Nico Sollmann, Paul Schandelmaier, Corinna Börner-Schröder ほか(計14名) 公開日: 2026年7月27日 DOI: 10.1038/s41598-026-63292-7
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