クローン病の腸壁に棲みつく「悪玉大腸菌」を便移植で追い出す

30人のパイロット試験で、保菌が確認できた8人全員から姿を消した

調査レポート
クローン病の腸壁に棲みつく「悪玉大腸菌」を便移植で追い出す——30人のパイロット試験で、保菌が確認できた8人全員から姿を消した

クローン病は、腸に慢性的な炎症が続く原因不明の病気で、若い世代にも多く発症します。その発症や悪化に関わる候補として注目されてきたのが、腸の壁にくっついて細胞の中にまで入り込む「接着侵入性大腸菌(AIEC)」です。香港中文大学の研究チームは、健康な人の便を移植する治療(便微生物移植、FMT)でこの菌を腸壁から追い出せるのかを、患者30人で確かめました。

研究の概要

対象は、血液中に大腸菌に対する抗体をもつ成人のクローン病患者30人です。この抗体は、腸の中で大腸菌と免疫がせめぎ合っている目印と考えられており、AIECを保菌している可能性が高い人を選ぶために使われました。患者は2人のドナーのうちどちらかの便を、大腸内視鏡を使って1回だけ移植されました。

この試験の主な評価項目は安全性で、移植後12週間以内の有害事象が調べられました。あわせて、腸の粘膜にいるAIECの変化、症状などの臨床指標、便と腸粘膜それぞれの細菌叢の変化も分析されています。便は全ゲノムを網羅する解析で、小腸の終わりの部分(回腸)の粘膜は16S rRNA解析で、移植の前後に調べられました。

主な結果は次のとおりです。

一方で、移植前の抗体の値はAIECを保菌している人ほど高かったものの、移植後も高いまま下がりませんでした。血液検査の値だけでは、腸壁の菌が消えたかどうかを判断しにくいことがうかがえます。

研究チームは、病気の現場である腸粘膜を直接調べることの大切さを強調しています。便の検査だけでは、粘膜で起きている細菌の変化を見逃すおそれがあるためです。

注意しておきたい点

この研究は、全員が移植を受けるオープンラベルの小規模なパイロット試験で、比較のための偽治療群を置いていません。AIECが消えた人数も8人と限られており、症状の改善や再燃の予防につながるかどうかは、今回の結果からは判断できません。便移植がクローン病の治療として確立したと受け止めるのではなく、「腸壁の悪玉菌を狙って減らす」という考え方が人でも実現しうることを示した、最初の手がかりと考えるのが妥当です。

日常生活への示唆

出典

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