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心不全の人の腸ではビフィズス菌が減っていた

多いほど症状が改善しやすい可能性

調査レポート
心不全の人の腸ではビフィズス菌が減っていた——多いほど症状が改善しやすい可能性

心臓のポンプ機能が弱まる「心不全」は、高齢化とともに患者数が増え続けている病気です。薬による治療は進歩していますが、同じ治療を受けても良くなる人と悪化する人がいて、その差を生む要因はよくわかっていません。米スタンフォード大学の研究チームは、その手がかりの一つが腸内細菌にある可能性を示しました。

研究の概要

研究チームは、冠動脈の病気(心筋梗塞など)以外の原因で心臓の収縮力が低下した慢性心不全の成人59人と、健康な成人50人を比較しました。便から腸内細菌の遺伝子をまとめて解読したうえで、血液中の代謝物、脂質、76種類のサイトカイン(炎症にかかわる物質)なども合わせて測定しています。さらに心不全の26人には約6か月後に同じ検査を繰り返し、51人については平均27か月後までの経過を追いました。

その結果、心不全の人の腸内細菌は種類の多様性が低く、ビフィズス菌(Bifidobacterium)や、食物繊維から短鎖脂肪酸をつくる菌のグループが減っていました。腸内細菌がつくる酪酸などの短鎖脂肪酸の産生能力も低いと推定され、反対に炎症を起こしやすい菌の関連経路が増えていました。

特に注目されたのがビフィズス菌です。ビフィズス菌が多い患者さんほど左心室の拡大や右心室の機能低下が軽く、6か月の間に息切れなどの症状の重さ(NYHA分類)が改善した人では、ビフィズス菌がもともと多く、時間とともにさらに増えていました。

研究チームは、両者をつなぐ候補として「インドール-3-プロピオン酸(IPA)」に注目しました。IPAは、食事に含まれるアミノ酸のトリプトファンから腸内細菌がつくる物質で、心臓を守る働きが動物実験などで報告されています。心不全の人では血中IPAが健康な人より大きく低下しており、IPAが高い患者さんほど心不全が軽く、心臓移植や死亡などの重い転帰のリスクも低いという関連が見られました。さらに試験管内の実験で、一部のビフィズス菌株がIPAをつくれることも確認されました。

また、腸内細菌の情報だけを使った機械学習モデルは、心不全と健康な人を高い精度(AUC 0.94)で見分けることができました。臨床検査値などをすべて組み合わせたモデル(AUC 0.95)とほぼ同等の性能だったことから、腸内細菌が心不全の状態を強く反映していることがうかがえます。

注意すべき点

この研究は1施設・比較的少人数の観察研究であり、ビフィズス菌が心不全を改善させたという因果関係を示したものではありません。心不全の状態そのものが腸内環境を変えている可能性や、服用している薬の影響も完全には切り分けられていません。対象は男性が多く、糖尿病の治療中の人などは除外されているため、すべての心不全患者さんに当てはまるとは限りません。著者らも、ビフィズス菌のプロバイオティクスが心不全に効果があるかどうかは、今後の臨床試験で確かめる必要があると述べています。

日常生活への示唆

現時点で「ビフィズス菌をとれば心不全が治る」とは言えません。心不全の治療中の方は、自己判断で薬やサプリメントを変えず、主治医の指示に従ってください。そのうえで、腸内環境を整える一般的な習慣は、心臓を含む全身の健康の土台づくりとして取り入れやすいものです。

腸と心臓という離れた臓器が、細菌のつくる物質を介してつながっているかもしれない——今回の研究は、心不全の経過を予測する新たな目印や、将来の治療の糸口として腸内細菌に期待が寄せられていることを示しています。

出典

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