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30秒「1から30まで数える」だけで老いの速さがわかる

約7,000人の声が明かした「Voice Age(声の年齢)」

調査レポート
30秒「1から30まで数える」だけで老いの速さがわかる——約7,000人の声が明かした「Voice Age(声の年齢)」

血液検査もMRIも要りません。マイクの前で30秒間、1から30まで声に出して数えるだけで、その人の「体の老い方」が推定できるかもしれません。イスラエルのワイツマン科学研究所の研究チームが、40〜70歳の成人6,979人の音声を解析し、声に含まれる老化のシグナルを大規模に検証した結果が、2026年9月11日にnpj Agingに掲載されました。この雑誌は日本抗加齢医学会と提携して発行されているNature系のオープンアクセス誌です。

研究の概要

研究チームは、参加者が診察室で1から30まで数えた30秒間の録音を、音声認識用の深層学習モデル「WavLM-Large」に通して数値の特徴(埋め込み表現)に変換し、そこから実年齢を予測するモデルを男女別に作りました。予測された年齢を「Voice Age(声の年齢)」と名付けています。

予測の精度は、女性で平均誤差3.95歳、男性で4.41歳でした。人間が声を聞いて年齢を当てる場合の誤差は5〜10歳程度と報告されており、AIはそれを上回る精度だったことになります。従来の音響学的な特徴量(声の高さや揺らぎなど)を手作業で組み合わせたモデルと比べても、深層学習モデルの精度は2倍以上でした。

興味深いのは、同じコホートで作られた他の8種類の「老化時計」との比較です。血液の代謝物、体組成(DXA)、網膜画像、睡眠、食事、生活習慣、腸内細菌などから年齢を予測するモデルと並べたところ、Voice Ageは質量分析による代謝物に次いで2番目に高い精度を示しました。しかも他の時計との相関は中程度(相関係数0.23〜0.59)にとどまり、声は既存の指標とは異なる情報を捉えていることが示唆されました。実際に、他の時計にVoice Ageを加えると、160回の検証のうち159回で予測精度が向上しています。

「声が老けて聞こえる人」の体では何が起きているか

研究チームはさらに、実年齢より声が老けて聞こえる上位25%と、若く聞こえる下位25%を比較しました。男女ともに共通して見られた特徴は、腹囲と内臓脂肪面積が大きいこと、そして睡眠時無呼吸の指標(無呼吸低呼吸指数)が高く、夜間の血中酸素飽和度が低いことでした。女性では加えて握力が弱く、拡張期血圧が高い傾向があり、男性では肝臓の画像指標に差が見られました。

声を出すには、呼吸、喉、口の動きをミリ秒単位で協調させる必要があります。内臓脂肪の蓄積や上気道の状態、筋力の低下といった全身の変化が、声という出口に集約されて表れている可能性が考えられます。

注意すべき点

この研究は一時点の横断的な解析であり、声が老けて聞こえる人が将来病気になりやすいかどうかは、まだ検証されていません。参加者はヘブライ語を話すイスラエルの成人に限られ、日本語話者や他の年齢層にそのまま当てはまるかも不明です。著者らも、個人の指標として使うには、測り直したときの再現性や録音環境の影響を確かめる必要があると述べています。

日常生活への示唆

声の検査を今日から受けられるわけではありませんが、この研究が示す「声が老ける人の共通点」は、私たちがすでに知っている生活習慣の課題と重なります。腹囲を減らすこと、いびきや睡眠時無呼吸を放置しないこと、握力を保つ筋力トレーニングを続けることは、いずれも声の若さと結びついていました。

家族から「声が変わった」「最近いびきが大きい」と言われたら、それは老化のサインかもしれません。将来、スマートフォンで数十秒話すだけで健康リスクを拾い上げる時代が来る可能性を、この研究は示唆しています。

出典

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