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抗菌薬を飲んでいる間の「甘いもの」が腸内細菌の乱れを深めるかもしれない

9,419食を記録した入院患者173人の研究

調査レポート
抗菌薬を飲んでいる間の「甘いもの」が腸内細菌の乱れを深めるかもしれない——9,419食を記録した入院患者173人の研究

抗菌薬(抗生物質)は感染症の治療に欠かせない一方で、腸内細菌叢を大きく乱すことが知られています。では、その乱れの大きさは、服用中に何を食べるかで変わるのでしょうか。2026年9月にNatureに掲載された研究は、抗菌薬を使っている期間に砂糖の多い食品をとると、腸内細菌の多様性の低下が深まる可能性を示しました。

1食ずつ記録した食事と便の細菌を突き合わせる

研究を行ったのは、米国メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのチームです。対象は、血液がんの治療として同種造血幹細胞移植を受けるために入院した患者173人です。入院中は抗がん剤や抗菌薬が使われ、腸内細菌叢が強く乱れやすい状況にあります。

研究チームは、患者が実際に食べた9,419食を品目ごとに正確に記録し、158人から集めた1,009検体の便で腸内細菌の構成を調べました。そのうえで、便を採る前の2日間の食事内容、抗菌薬の使用、点滴栄養の有無、治療の強さなどを同時に考慮するベイズ統計モデルで、食べたものと腸内細菌の変化の関係を分析しました。

甘いものは「抗菌薬と重なったとき」にだけ影響していた

主な結果は次のとおりです。

寄与が大きかったのは、スポーツドリンクや栄養補助ドリンクのような飲料と、食品にもともと含まれる糖ではなく「加えられた糖」でした。移植患者には糖分を多く含む栄養補助飲料がよく勧められているため、研究チームもこの結果を意外なものとしています。

さらにマウスの実験では、抗菌薬を1回注射した後に砂糖(ショ糖)を与えると、腸球菌の増加が3日目で約16倍、6日目で約33倍に強まり、増えた状態が長引きました。抗菌薬を使わない場合は、砂糖だけでは腸球菌は増えませんでした。この結果も、砂糖と抗菌薬が重なったときに影響が出るという人での観察と一致しています。

研究の限界

この研究は、がん治療中の重い病状にある入院患者を対象としています。広域抗菌薬は発熱や感染症をきっかけに使われるため、病状の重さが結果に影響している可能性は残ります。また病院外から持ち込まれた食べ物の記録は不完全でした。健康な人が風邪などで短期間抗菌薬を飲む場合に同じことが起きるかどうかは、まだ確かめられていません。著者らも、別の集団での検証や、食事を変える介入試験が必要だと述べています。

日常生活への示唆

今回の結果から、すぐに全員の食事指導を変えるべきだとは言えません。それでも、研究チームは「抗菌薬治療中は砂糖の摂取を控えることが、腸内細菌への打撃を和らげる助けになるかもしれない」と考察しています。

抗菌薬の使い方だけでなく、「その間に何を食べるか」も腸内細菌を守る手がかりになりうることを示した研究と言えます。

出典

論文タイトル: Sugar-rich foods exacerbate antibiotic-induced microbiome disruption 著者: Anqi Dai, Annamaria Ballweg, William Jogia, ほか, Jonas Schluter, Jonathan U. Peled(計44名) 掲載誌: Nature 公開日: 2026年9月30日 DOI: 10.1038/s41586-026-11077-3 URL: https://www.nature.com/articles/s41586-026-11077-3

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