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腸内細菌がつくる「奇数の脂肪酸」が動脈硬化を半分に? マウスで見えたコレステロール低下の新しい仕組み

心筋梗塞や脳梗塞の土台となる動脈硬化は、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)と深く関わっています。

調査レポート
腸内細菌がつくる「奇数の脂肪酸」が動脈硬化を半分に? マウスで見えたコレステロール低下の新しい仕組み

心筋梗塞や脳梗塞の土台となる動脈硬化は、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)と深く関わっています。2026年10月、Nature誌に、腸内細菌がつくる脂肪酸の一つが肝臓のコレステロール合成を抑え、マウスの動脈硬化を約半分に減らしたとする研究が掲載されました。腸と肝臓、そして血管をつなぐ新しい経路を示した研究として注目されます。

研究の概要

中国の研究チームは、まず「動脈硬化の患者では腸内のバクテロイデス属の細菌が少ない」という過去の報告に着目しました。論文の補足データでは、動脈硬化性心血管疾患の患者223人と対照189人の腸内細菌のデータを比べ、健康な人に多い菌を洗い出しています。ただし、菌が少ないことが病気の原因なのか結果なのかは、これまで分かっていませんでした。

そこで研究チームは、動脈硬化を起こしやすい遺伝子改変マウス(Apoe欠損マウス)に高脂肪食を与え、バクテロイデス属の一種であるバクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)を週3回、最長12週間にわたって口から投与しました。その結果、大動脈のプラーク(血管の内側にたまる脂質の塊)が減り、肝臓でLDLを取り込む受容体(LDL受容体)の働きが高まることが示されました。

次に、この菌の培養液から有効成分を絞り込んだところ、ペンタデカン酸(C15:0)という炭素数15の飽和脂肪酸が主な活性物質として見つかりました。一般的な脂肪酸は炭素数が偶数のものが多く、C15:0は「奇数鎖脂肪酸」と呼ばれる珍しいタイプです。

ペンタデカン酸だけをマウスに8週間投与すると、動脈硬化のプラークはおよそ50%減り、血液中の脂質の値も有意に改善しました。仕組みを調べると、ペンタデカン酸は、コレステロールを体内でつくる鍵となる酵素「HMG-CoA還元酵素」に直接結びつき、その働きを妨げていました。この酵素は、コレステロールを下げる薬として広く使われるスタチンが標的とする酵素と同じです。肝臓でのコレステロール合成が抑えられると、肝臓は血液中からLDLを取り込むようになり、結果として血中のLDLが下がると考えられています。

さらに、ヒトの腸内細菌100株を調べたところ、ペンタデカン酸をつくる能力はバクテロイデス門の複数の属に広く見られました。また、脂質異常症の患者ではペンタデカン酸が著しく少ないことも報告されています。

日常生活への示唆

この研究は、腸内細菌が「コレステロールを調節する物質をつくる工場」として働いている可能性を示した点で興味深いものです。ただし、主な結果はマウスでの実験であり、ヒトで同じ効果が得られるかは確かめられていません。ペンタデカン酸はサプリメントとして販売されていることもありますが、この研究だけを根拠に摂取を始めることはおすすめできません。用量や長期の安全性はヒトでは検証されていないためです。

現時点で私たちにできることは、次のような基本的な対策です。

腸内細菌と血管の健康のつながりは、今後ヒトを対象とした研究で検証が進むと考えられます。動脈硬化の予防に、腸内環境という新しい視点が加わりつつあると言えます。

出典

論文タイトル: A gut microbial odd-chain fatty acid alleviates atherosclerosis in mice 著者: Chao Yin, Youzhe Chen, Gan Lin ほか(計29名) 掲載誌: Nature 公開日: 2026年10月7日 DOI: 10.1038/s41586-026-11142-x URL: https://www.nature.com/articles/s41586-026-11142-x

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