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帝王切開で生まれた子の喘息リスク、カギは「1歳時点の腸内細菌」

カナダの出生コホート研究がトリプトファン代謝物に注目

調査レポート
帝王切開で生まれた子の喘息リスク、カギは「1歳時点の腸内細菌」——カナダの出生コホート研究がトリプトファン代謝物に注目

帝王切開で生まれた子どもは、経腟分娩で生まれた子どもに比べて小児喘息になりやすいことが、これまでの研究で知られています。ただし、なぜそうなるのかは十分にわかっていませんでした。Nature Communicationsに掲載されたカナダの研究は、生後1年時点の腸内細菌の状態と、細菌がつくる代謝物がこの関係の一部を説明している可能性を示しました。

研究の概要

研究チームは、カナダの大規模な出生コホート研究「CHILD」に参加した子どもたちのデータを分析しました。出生方法がわかっている3,089人のうち、78%が経腟分娩、22%が帝王切開で生まれていました。このうち約1,400人について、生後3か月と1歳の便を調べ、腸内細菌と便中の代謝物を測定しています。

まず、帝王切開で生まれたことは5歳時点の喘息リスクの上昇と関連していました(オッズ比1.66)。

次に、機械学習を使って「その子の腸内細菌がどれだけ帝王切開に特徴的な構成に近いか」を数値化した指標(CSスコア)をつくりました。生後3か月では腸内細菌の構成から出生方法をかなりの精度で見分けられましたが(AUC 0.78)、1歳になるとその差は小さくなっていました(AUC 0.60)。多くの子どもでは、腸内細菌の乱れが成長とともに回復していくことがうかがえます。

注目されるのは、5歳時点の喘息リスクと関連していたのが、生後3か月ではなく1歳時点のCSスコアだけだった点です。1歳時点のスコアが1標準偏差高いと、喘息のオッズは1.41倍(ほかの要因で調整後は1.30倍)でした。媒介分析では、帝王切開と喘息の関連のうち約25%が、1歳時点の腸内細菌の状態を介している可能性が示されています。これは、研究チームが以前にデンマークのコホートで報告した結果と一致しています。

さらに便の代謝物を調べると、1歳時点のCSスコアが高い子どもでは、トリプトファンというアミノ酸から腸内細菌がつくる「トリプタミン」が多い傾向がありました。トリプタミンと、その下流の代謝物である「インドール酢酸」は、5歳時点の喘息リスクとの関連を部分的に媒介していると推定されました。トリプタミンの量は、ルミノコッカス・グナバスという菌の多さと強く関連していました。これらの代謝物は、腸のバリア機能や免疫の調節にかかわる受容体(AhR)に働きかけることが知られており、研究チームは免疫への影響を通じて喘息リスクにつながる経路を想定しています。

一方で、帝王切開で生まれた子どもでは、バクテロイデス属などの菌が生後3か月から1歳まで少ない状態が続いていました。また、上にきょうだいがいることや、1歳時点で母乳を続けていることは、1歳時点のCSスコアが低いことと関連していました。経腟分娩でも、出産時に母親が抗菌薬を使った場合は、子どもの腸内細菌が帝王切開に近い構成になる傾向が見られました。

日常生活への示唆

まず大切なのは、この研究が帝王切開そのものを避けるべきだと示しているわけではない点です。帝王切開は母子の命を守る重要な医療であり、必要なときにためらう理由にはなりません。

この研究から読み取れるのは、生まれ方よりも、その後の1年間で腸内細菌がどう育つかが重要かもしれないということです。実際、帝王切開で生まれた子どもの多くで、1歳までに腸内細菌の乱れは小さくなっていました。母乳を続けられる場合は続けること、子どもへの抗菌薬は医師の判断に沿って必要なときに使うことなど、腸内細菌の成長を支える一般的な育児の工夫が、今後の研究で改めて評価されていくと考えられます。

ただし、これは観察研究であり、因果関係を直接示したものではありません。特定のプロバイオティクスなどで喘息を防げるかどうかも、この研究では検証されていません。気になることがあれば、自己判断で何かを足すのではなく、小児科医に相談することをおすすめします。

出典

論文タイトル: Microbial-derived tryptophan metabolites in the infant gut associate with increased risk of asthma following cesarean section 著者: Jie Jiang, Darlene L. Y. Dai, Casper Sahl Poulsen, Kaare Tranæs, Tingting Wang, Charisse Petersen, Courtney Hoskinson, Theo J. Moraes ほか 掲載誌: Nature Communications 公開日: 2026年9月3日 DOI: 10.1038/s41467-026-77355-w URL: https://www.nature.com/articles/s41467-026-77355-w

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